カナダのトロント大学歯学部と共同で歯科継続学習プログラム 

インタビュー

歯科開業医のニーズに合致する形で提供
(株)IMEDLS澤田まゆみ社長に聞く


(株)IMEDLS(澤田まゆみ社長,東京・港区虎ノ門)がカナダのトロント大学歯学部と共同で歯科継続学習プログラムを歯科開業医のニーズに合致する形で提供する.澤田社長にカナダの国情やトロント大学,歯科継続学習プログラムの内容などについて聞いた.

―どのような経緯で,会社を興したのか.
39歳まで塾を経営していたが,勉強をし直したくなりカナダのモントリオールの大学に入って心理学を学んだ.その後トロントに移住したが,帰国してから心理学をやるか留学生の斡旋をするか迷った.また,トロント大学のザビコン財団の研究員でもあるので,異文化における心理学や政治学の研究も続けている.
そのなかで継続学習の必要性を感じた.大学側は人の身体や心を扱う職種は絶対に認定制にすべきとしている.学んだことは年々変っていくので,前の知識だけで人に対応はできない.日本に継続学習プログラムがないとわかり,トロント大学歯学部に相談した結果,歯科継続学習プログラムの事業となった.
しかし,3年前は何をいっているんだ,という感じで誰ものってこなかったが,昨年12月25日にトロント大学歯学部継続学習学部の副学長Barry Korzen ,ワシントン大学美容整形外科教授Peter Neliran, 私の上司でありヨーク大学アジア太平洋研究所副所長でザビコン財団社長のDonald Rickerdを取締役として,株式会社IMEDLSを創業した.IMEDLSは,International Medical&Dental Learning Societyの略である.

―トロント大学はどのような大学か.
1827年に設立され北米で最も歴史のある大学の一つで,多数のノーベル賞受賞者を輩出し,学生だけではなく教授や研究面のレベルも北米でトップクラスである.インシュリンの発見,心臓ペースメーカーの開発,人工咽頭移植,重症アルツハイマーの遺伝子の発見と研究,データー通信技術などで世界的に知られている.

第2回トロントインプラント学会が5月8日〜10日開催
―歯科継続学習プログラムについて
ネットで発信する継続学習の全コースは約100プログラムで構成されている.あるプログラムは3D画像やアニメ,イラストで作成されており,ゲーム感覚で見ることができる.過去に自分たちが習ったことが,最新の情報として現在はどのように行われているか,を知ることができる.
このプログラムは歯科医師全体の底上げをするために,考案されたものである.特に数種類のバーを選択して行う歯牙切削などは,ゲーム感覚で試すことができるし,テクニックについては音声で誘導してくれるので英語が覚えられという利点もある.カナダの英語は,イギリスの英語とアメリカの英語の中間で分かりやすい.研修は日々楽しくないと続けられないので,歯牙の選択についてもゲーム感覚でのプログラムになっており,削り過ぎると指摘され,正しい範囲が3Dの画像やアニメ,イラストで示される.
また,患者に対応するコミュニケーションについても学ぶことができる.
大学から最新知識や研究が入手でき,教授や研究員とQ&Aができる.さらに症例検討や適確なアドバイスがエビデンスベースかつ科学的に提供される場ともなる.
特徴としては,美容整形外科と共同で,総合的に,審美歯科,インプラントを中心とする独自のプログラムを提供する.会員制の継続学習,情報の共有の場を提供する.歯科経営学やクレーム処理学等の日本では新しい分野のプログラムも紹介していく.将来の目標としては,一般の患者もアクセスできるウエーブサイトを構築し,患者獲得のためのサポートを行う.

―歯学部について
カナダ最大の歯科全プログラムを持つ総合歯学部であり,教育リサーチ大学としては,ハーバード大学やワシントンDCとトロント大学がトップ3と称されている.
最近の傾向として,歯科はヘルスケアの重要なアイテムとして,医学部と連携協力して研究が進められている.また,北米の2つしかない継続学習の特別施設を持ち,インプラント,審美歯科のハンズオンには最適な施設となっている.
独自のインプラントを開発しおり,1982年のトロント大学主催のトロントインプラント学会では,世界のインプラントのガイドラインを決めた.その25年後として,次世代のインプラントの方向性を決める学会として,今年5月8日から10日に,トロント大学主催で第2回トロントインプラント学会が開催される.
―カナダの国情について
歯科医師の年収は3,500万円から4,000万円である.医科は全額保険でカバーされるが自己負担はゼロであるが,歯科は自費である.民間保険が歯科治療をカバーしている.
オイルは中近東の約10倍,ダイヤモンド鋼はロシアと南アフリカの何倍,天然ガスも何倍,レアメタルも想像できないほど多い国である.起業しても欲がないので,ほとんどアメリカに買収され持っていかれる.新たな研究はするが鷹揚であり開放する.
カナダに外国人が3,000万円持ち込んで起業すると,我が国に役に立つ事業なら応援しようと政府は3倍の約1億円くれる.消費税は17%ほどであるが,生命に関わるもの,例えば食品などは無税である.政府は予算が余ると年末に家族1人6万円くれる.銀行は中小企業にたくさん金を貸す.また,アメリカの電気の何10%かはカナダが供給しているので,アメリカには強気の国である.



“訪問歯科診療のパイオニア” 

大きな医療法人の経営破綻の噂が何かと絶えない.
 “経営が破綻寸前”などの負の面の情報は,とかく1人歩きする.
 「うち(医療法人社団郁栄会やデンタルサポート)も15年前から危ないと言われ続けています」と寒竹氏は苦笑した.
 人生は山あり谷あり,それを前向きな姿勢で乗り越えていけるかどうか.順風満帆な人生はごくまれである.デンタルサポートグループも昨年,大きな谷を経験している.
 診療報酬の改定が大きく響き,業績が落ち込み,単月で赤字が続いた,と打ち明ける.
 「何度も危機を経験しましたが,それを乗り越えていくのが経営ではないでしょうか.乗り越えられるかどうかは,経営者次第です.それは底力であり,運もあり,持って生まれたものかもしれません.経営は生き物と同じで,この先も,どうなるかはわかりません」
 寒竹氏は開業医として,非常に順調なスタートをきった.やがてバブルの波に乗って,7階建のビルも立てた.
 取材のなかで寒竹氏は,しばしば“直感”ということを口にしたが,直感で“歯科医師が個人でできる限界”を感じていたようである.そしてバブル崩壊の憂き目をみたのだった.
 “歯科医療は,組織として取り組まなければ発展が見込めない”が寒竹氏の持論となった.
 “医療の倫理と企業の論理の融合”を同社の企業理念に掲げ,現在は“歯科医療の産業化”を図っている。
 過去に遡ると,同社の最大の危機は記者が寒竹氏と知り合ったころであった.
 某大手介護事業者から買収工作を受け、理念の違いからそれを拒絶したら,本社役員ら16人中,15人を引き抜かれ,まったく同じスキームの競合他社を立ち上げられてしまったのであった.
 その企業は現在,不正の発覚から経営の実情を露呈され,社会的に大きな問題となっている.
 “誰のために,何のために”?この視点こそが大切であり,介護・福祉・医療  分野が,利潤追求のみとなったら本末転倒である.
 「平成13年に経営資源を全部,訪問診療に振り分けました」
 ここに,訪問歯科診療のパイオニアとしての 同社の自負がある.
 「大事なことは,何のため,なぜ訪問診療が必要なのか.それは要するに“理念の共有”ということなんです.そして提携先歯科医院とパートナーシップをうまく機能させていることが重要なんです」と寒竹氏は語る.
 また,今回の取材で寒竹氏は,歯科技工の分野の可能性も強調していた.
 「日本の歯科技工士が持っている技術は,世界最高レベル.中国をはじめ海外市場は,大きな可能性を占めています.やり方次第,発想の転換です」と述べていた.
 なお,デンタルサポートの事業展開および寒竹氏の経営者としての理念・哲学については,同社が開催する「経営者セミナー」(7月29日・海浜幕張にて開催)で語られる他,書籍「訪問歯科診療が歯科医療の常識を変える」(鶴蒔靖夫著,IN通信社,7月19日発行)に詳細に著されている.書籍は書店での取り扱いの他,同社のホームページでも購入が可能。(http://www.dentalsupport.co.jp)

編集後記
 寒竹郁夫氏には,別の顔がある.政権交代を目指すベンチャー・中小企業家による政策提言グループ「政経倶楽部」の代表幹事である.
 現在,首都圏を中心に中小企業の経営者らが会員となっている.次代を担う企業家や政治家の育成などが活動の目的である.
 同氏が求めているのは,21世紀の日本に必要な理念,ビジョン,戦略であり,この国のあり方を根本から問うのであるから,歯科医師や中小企業の経営者の立場の方々には“巨大なテーマ”である.
 「愚痴をいっても始まらない.傍観者でいたくない.本気でこの国をよくしたい.言論界のオピニオンリーダーにも加わってほしい」と寒竹氏は心情を述べた.      (山本嗣信)

恩師を語る 佐口 卓先生から社会保険制度の源流を学ぶ 

大嶋 基司氏(川崎市開業・日歯連盟評議員)


 私が佐口卓先生(早稲田大学名誉教授・元中医協委員)の存在を知ったのは,九州歯科大学の学生のころです.先生の著書を読み大変興味を感じ,歯科医師国家試験がすんだら東京へ行き,直接佐口先生のお話が聞きたくなりました.
 そのきっかけは,歯科大学のときに高木興氏先生の存在を知ったことによります(高木先生は日本大学歯学部を卒業後,予防歯科の研究のために東京医科歯科大学の大学院に進み,早稲田大学でも私たちの同門であり,東北大学と長崎大学の先生を務められていた).
 歯科大学の6年を終え,本来なら歯科の道へ進むのですが,早稲大学大学院の商学研究科への進学を両親にお願いしました.当然開業するものと両親は考えており,猛烈に反対され,了承を取ることに手間取ったことを覚えています.実際私は歯科臨床にそれほど興味を持てなかったのです.
 早稲田大学大学院進学後は,ゼミの先輩の高木先生にアドバイスをいただき,しばらくたって佐口卓先生のゼミに入ることになり,ゼミでは社会保険の"イロハ"から日本の社会保険制度を解明する方法まで学ぶことができました.
 その後,明治大学の商学研究科へ進み,日本経済論を修めましたが,佐口先生の下で,日本の社会保険制度の研究に入り,明治期の農商務省の「労働者保険法草案」と大正期の内務省の「労働者疾病保険草案」についてを『週刊社会保障』に昭和45年と47年に発表しました.この2つの研究は,佐口先生が主著「日本社会保険制度史」をまとめられるにあたり,そのなかにも取り入れていただきました.
 佐口先生は,大阪市立大学の近藤文二先生と並んで,戦後における社会保険研究の泰斗で,研究者としてではなく,政府の各種の審議会や委員会に参画されており,社会保障制度審議会の委員を17年間も務められました.
 また,そのゼミや門下から研究者や実務家が数多く育っており,現在,社会の色々な分野で活躍しています.現在,中央社会保険医療協議会会長の土田武史先生は私より少し早く早稲田大学大学院経済学研究科の平田冨太郎先生の下で研究生活に入られました.国士舘大学の講師時代よりドイツの共済金庫制度の研究を始められ,その後,共済金庫の歴史をたどりながらビスマルク医療保険制度へと展開していった過程を解明され,その成果が「ドイツ医療保険制度の成立」(勁草書房)にまとめられています.土田先生は佐口先生の後任教授になられたことにより,私たちの佐口ゼミ(卓友会)の仲間と親しく交友することとなり,今日に及んでいます.私は歯科医業に戻ってからも,佐口先生の晩年からゼミ事務局を手伝うようになりました.
 佐口先生との話のなかで,私が忘れられないものに「社会的制度には,社会的風土の影響があり,社会的風土の賜である」があります.「医療保険制度にもそれが現れており,日本の医療の現物給付のその1つである」と述べていました.
 私はここからヒントを得て,「先生は社会的風土と言われたが,社会や経済の根底にある文化の違いが制度の色合いに強くにじみ出ているのではないか」と考えました.社会的制度の各国の仕組みには世界共通の面と違いの2つの面が見られ,違いの面の各国の色合いにはその根底に固有の文化があるので,そこから色濃く文化の光が照射していると思っています.
 長い遊学生活に区切りをつけ,商科の研究生活とはなれ,臨床に戻ってから,社会保険制度研究の傍らに「日本の社会制度・文物のなかの日本的ななるもの」の解明が私の生涯の研究テーマになり,その対象の1つとして日本の仏教を選び,日夜その解明に尽くしています. 

佐口卓先生の主な著作
 「暮らしを守る社会保険」 日本労働協会 「企業福祉 」 佐口卓/編 至誠堂
 「サラリーマンの年金学」 社会保険広報社
 「現代の医療保障 医療の階層性をめぐって」 東洋経済新報社
 「女性の年金学」社会保険広報社 「日本社会保険制度史 勁草書房
 「医療の社会化」 勁草書房 「社会保障」 日本労働協会
 「国民健康保険 形成と展開 」光生館
 「社会保障概説」 佐口卓/共著 土田武史/共著 光生館