寄稿・投稿 歯科診療所の現況とその経営改善策 

「医療経済実態調査」が歯科医院経営の窮状を表していない

                               
 大嶋基司(神奈川県川崎市開業)

私たちの歯科診療所の医院経営は,これまでの長引く診療報酬のマイナス改定により悪化を続けている.
平成19年12月27日提出の前原誠司衆議院議員(民主党)の「歯科医療の向上に関する質問主意書」の7番目の質問「中央社会保険医療協議会が平成19年6月に実施した第16回医療経済実態調査(医療機関等調査)結果速報によると,一般診療所(個人立・無床)の収支差額が225.3万円(月額)であるのに対し,歯科診療所(個人立)の収支差額は122.9万円(月額)となっている.等しく人間の生命と健康を扱う医療機関において,約2倍の格差が付いていることを是正すべきだと考えるが,政府の見解を問う」の行政側の回答は(福田総理大臣の名前で)次のようになっている.
「厚生労働省としては,歯科診療報酬については,物価,賃金等の動向,歯科保険医療機関の経営状況,医療保険財政の状況等を総合的に勘案し,中医協における議論を踏まえて適切に設定しているものと考える」
この答弁は,ただ今の診療所の経営現況と照らしてみるならば,歯科診療報酬は「適切」に設定されていると言わざるを得ない.
こうした見解に相違をきたしているのは,「医療経済実態調査」が歯科医院経営の窮状を表していない実態調査であるからにほかならない.行政側の統計に反論するためには,統計時期やサンプリングの取り方等に公平を期した調査をして,その統計を分析する際,どうしてこのような数字になるのかを吟味して,診療報酬制度とその報酬額のどこに問題があり,国民歯科医療の推進(充実)のためにどのような改善策をもって臨むのか,をまとめて公になされなければならない.
国民歯科医療の充実のためには(今回の診療報酬改定を鑑みるならば)望ましい歯科保健・医療の姿をまず最初に議論して,現行の制度の中でそれを実現するに際しての問題点を指摘し,財源の確保を計り,医療保険の中での診療報酬の具体的な形を検討することになるだろう.
伝え聞くところによると,日本歯科医師連盟は時機に適った(政局の推移に合わせた)政策を提言するために,今年度4月より日歯総研とは別に柔軟で機動性があり,かつ継続性のある活動を実現するための調査研究活動を進めるようだ.ぜひ,会員診療所の経営状況の実態調査を望むものである.
こうした会員診療所の経営状況の把握だけではなく,診療報酬制度の不合理さ(技術再評価等),歯科医師需給問題の隘路,歯科保健基本法などを鋭く調査し,それをもとに確かな分析がなされるならば,改善に向けて有効な処方箋(解決策)を導き出すことも可能となるだろう.
地域における歯科保健と医療の推進の担い手の歯科診療所の経営の破綻は,口腔歯科保健・医療の衰微を来たすことになる.一刻も早い対応がなされねばならない.
日本歯科医師会と日本歯科医師連盟の今後の尽力に期待するところ大である.


[ 2008/04/09 11:33 ] 寄稿・投稿 | TB(0) | CM(0)