訪問看護の現場,薬事法で衛生材料が常備できない 

記者の視点

“療養指導を看護師の裁量にすべき”


政治家は現場に足を運び,政策を具体的に立案すべきである.
例えば,後期高齢者医療制度については,訪問看護に係わる現行の制度では,1)24時間体制の加算が低い,2)夜間・早朝の緊急訪問の加算がない,3)ターミナルケアの評価が低い,4)週4日以上の訪問看護は対象者が制限される,などの問題点がある.
医療保険の「24時間連絡体制加算」は,1月につき2,500円(介護保険の「緊急時訪問看護加算」は5,400円)であり,サービスに見合った報酬ではなく,経営上,24時間体制をとることが困難とされる.
訪問看護ステーションには,薬事法により衛生材料が常備されていない.褥瘡の処置,尿道留置カテーテルの交換,点滴などの衛生材料を管理できないために,すみやかに的確な対応を行うことが困難であり,救急車で病院に搬送する例もある.
そこで薬事法に規定されている衛生材料の取扱いを緩和し,処置の実施者である訪問看護師が常備できるようにする必要がある.
衛生材料:生理食塩水,キシロカインゼリー(尿道留置カテーテルの交換に使用),消毒液,尿道カテーテル,点滴セット等.
また,在宅医療の推進,訪問看護の広がりが後期高齢者医療制度の課題であり,栄養摂取や清潔の保持などの療養指導を看護師の裁量とすることである.「療養上の世話」に関する医師の指示を解除すべきではないだろうか.
なお,インシュリン注射,胃ろう・経管栄養・吸引・吸入等のケアは,毎日訪問が必要であるが,週4回以上の訪問対象者が限定されている.机上の空論的,現場を無視した制度設計となっているのである.
歯科分野にも同様の問題点がある.歯科衛生士の裁量権をどこまで認めるかである.それによって在宅・訪問分野に拡がりが期待できそうである. (山本嗣信)









[ 2008/06/02 15:45 ] 記者の視点 | TB(0) | CM(0)

金パラの高騰等で歯科技工所が閉鎖へ 

記者の視点

歯科医療の低医療費政策の影響も


金銀パラジウムの高騰は,大きな波紋を歯科業界に投げかけている.ある歯科用品商によると,最近1年間で7軒の取引先の歯科技工所が閉鎖したという.
逆ざやで金銀パラジウムを歯科医院が使用しなくなったのである.また,年収200万円〜400万円の歯科医師がいるという現実には,唖然とするばかりである.
都内と埼玉県内の歯科技工士の話では,歯科技工料金を払ってくれないという歯科医師もいて嘆いていた.「患者が払ってくれないから,技工料金が払えない」と相手の歯科医師は言っているそうである.
歯科技工士間では,その歯科医師は悪名が高く,「歯科技工士いじめの常習者」これ以上,被害者を出したくないので,歯科技工士会のネットで歯科医院名などを公表したいが,と相談を持ちかけられた.
だが歯科技工料金を払いたくも,払えない歯科医院が存在することも考えられる.歯科医療の低医療費政策は,これまで考えられないような事態を招いているようである.(山本嗣信)
[ 2008/05/02 13:38 ] 記者の視点 | TB(1) | CM(0)

後期高齢者医療制度における歯科の位置づけと対応 

記者の視点

地方医師会では反感が広がっている

75歳以上が加入する後期高齢者医療制度が4月から始まった.加入者側に戸惑いがあり,地方医師会では反感が広がっていると,マスコミが伝えている.しかし,後期高齢者医療制度に対する歯科医師会の批判は聞こえてこない.
「75歳での線引きには意味がない」「高齢者担当医が現実的ではない.高齢者は高血圧,糖尿病,神経痛など慢性の病気を抱えているので,別々の病院や別の医師に診てもらうことが多い」などの問題点が指摘されている.
老人医療費は2006年は約10.8兆円だったが,2025年には約25兆円にまで増えると国は推計している.過去8人で1人の高齢者を支えていた.現在は4人で1人の高齢者を支えているが,2025年には2人で1人の高齢者を支えることとなる.
後期高齢者医療制度は,財源を公費5割,現役世代4割,75歳以上1割負担とした.では新制度に利点はあるのか.
単身世帯で年金79万円の基礎年金だけの人は,これまでの国民健康保険料は年間3万3,100円(2006年)であったが,後期高齢者医療制度では1万2,500円ほどになる.
夫婦で基礎年金だけの場合は,4万円であったのが2万5,000円程度になる.
年間収入500万円以下の夫婦世帯は,保険料は現状維持か,それ以下になる.
以上が厚生労働省の試算である.
 現在,75歳以上の人は約1,300万人,その中で1,100万人が個人単位で保険料を納めていた.残りの約300万人は子どもなどの被保険者の扶養家族になっている.
また,4月から高額医療・高額合算制度が導入され,医療保険と介護保険の両方を利用する世帯の自己負担が,合算され限度額を超えた分は申請すると払い戻されることとなった.
例えば医療費53万円,介護費45万で,年間の限度額が合計して98万となっているケースでは,合算制度では限度額が56万円となり,これまでより42万円減額される.
さらに,低所得の場合は,住民税非課税世帯は31万円,年金収入80万円以下では19万円の限度額となる.
働いている高齢者(65歳以上)の中では,特に女性単独世帯は3世帯に1世帯は年間所得が100万円未満であり,後期高齢者へ移行した場合の保険料の負担も問題視されている.
患者の立場では,支出面で歯科医療は最初に押さえられる分野とされ,後期高齢者医療制度における歯科の分野の位置づけや対応に対する検討が迫られている.(山本嗣信)

[ 2008/04/23 11:53 ] 記者の視点 | TB(0) | CM(0)

中医協の医療経済実態調査とは何か 

記者の視点 


日本歯科医師会の日本歯科総合研究機構(石井拓男研究部長)の「歯科医療経営実態調査について」の報告書で,中医協の医療経済実態調査について以下のとおり分析している.
<中医協の医療経済実態調査>
1)歯科界が期待するようには,医療経済実態調査は用いられていないと思われる.
2)日歯独自調査を提示しても,中医協の医療経済実態調査に代わる資料として,有効性が高いとは考えられない.
3)医療経済実態調査自体の活用のされ方に疑問があることから,医療経済実態調査と同様な分析結果を提示しても,中医協において歯科の主張を強化するものとはならないと考えられる.
 
はじめに,“歯科医療費の削減”というシナリオありき,と思われる.診療報酬改定の結果が如実に物語っているとおり,中医協の医療経済実態調査を無視,度外視している,といっても過言ではない.
同時に中医協の論議の場では,歯科は“保険外の診療で結構,稼いでいるではないか”という突き放した見方があるようである.
このため,歯科保険医協会などは,“保険で良い入れ歯を”と訴え続けてきたのだと思うのである.俯瞰すれば,医科と歯科の 格差問題は,保険外の歯科診療の存在に,帰結するのではないだろうか.
それにしても,歯科診療の技術料は,あまりにも低く抑えられている.保険では,とてもやっていられないことを,“国民に向かって”強固に主張するほかないのではないだろうか.そのことは報告書にはないが.
(山本嗣信)





[ 2008/04/10 15:22 ] 記者の視点 | TB(0) | CM(0)

自動査定と歯科医療の標準化 

記者の視点

 


大阪府歯科医師会の岡会長が国の方針に警鐘

「お尋ねしますが,社会保険診療報酬支払基金の自動査定をご承知ですか? 私が知ったのは,ホームパージからですが」と2月29日の日歯都道府県会長会議で大阪府歯科医師会の岡邦恭会長が質問に立った.30分余の独演会のようになる.以下がその趣旨である.
<大阪府歯科医師会岡会長の発言>
私は10数年前から,レセプトオンラインシステムをやれば,間違いなく平均水準より突出しているレセプトは自動的に査定できるようになる.だから急いでレセプトオンライ化に足を向けてはならないといってきた.平成6年からこの危険性を指摘してきたが,現実のものとなってきた.
渡辺常務理事も知らない.日本医師会も知らない.厚生労働省と相談しながら社会保険診療報酬支払基金が独自で編み出したチェック項目が337項目ある.また,14,000の根拠に基づいた算定ルールがある.それがレセプトオンライ化に組み込まれている.
どのようなチェックを受けるのか,おおよその方向性について,私は平成6年から読んでいた.国はレセプトオンライ化をやるといったらやる.昔は徴兵制度があったが,裁判員制度が始まる.国民に課せられていた徴兵制度と同じかと大阪高検の検事に私が聞いたら,そのとおりだと認めた.
国家権力はやるといったら,とにかくやるのである.歯科も平成23年からレセプトオンライ化はスタートである.日本歯科医師会に責任がでてくることだけは忘れないでほしい.患者さんの大切な医療情報に対しても責務が派生する.
3月12日,画面歯科審査の充実に係わる検討委員会が始まる.これはレセプトオンライ化に引っ張っていくための検討委員会である.これと大きく連動し昨年の12月6日には,歯科診療所における歯科保険医療の標準化のあり方等に関する検討会が開かれた.
このときに医政局長が挨拶し,メンバーには保険局の医療課長,課長補佐,歯科医療管理官,元歯科医療管理官などおり,日歯の学術担当常務理事,日本歯科医学会の会長も出席した.エビデンスに基づいたガイドラインがあるが,ガイドラインは一定の方向性を示す,指針,指標である.
しかし標準化とは医療の規格化である.いいことではない.とんでもないことだ.それに協力するのか.日本歯科医学会には平成19年,2億7,000万円がでている.日本歯科医学会の前身は昭和23年,歯科医師会のなかに歯科学術会議ができた.先人たちが終戦3年目に歯科医学,歯科医療に魂を込めたのである.変遷を経て昭和32年に日本歯科医学会に改称された.
日本歯科医師会と日本歯科医学会は表裏一体である.それなのに国と手をつるみ歯科医療の規格に学会が手を貸している.これはどういうことか.大久保会長を責めているわけではない.我々が目覚めないと全国の会員にもうしわけないではないか.
 <取材後期>
 次の取材時間が迫っていたので,やむなく中座した.国は巧妙である.知らないうちに意図した方向へ誘導してくのではないかと思われた.例えば国の財政を医療費が圧迫している,という世論形成にも成功した.
 思うに医療費亡国論の故吉村仁氏(後年は厚生事務次官に就任)のレポートに込められた命題こそ負の遺産であり,医療崩壊の根本であろう.
<注>
医療費抑制のきっかけとなった「医療費亡国論」が出たのが1983年である.
「医療費亡国論」は,1983年に「社会保険旬報」に掲載された「医療費をめぐる情勢と対応に関する私の考え方」という論文に見ることができる.
論文の筆者は,当時の厚生省保険局長の吉村仁氏である.
吉村氏は「このまま医療費が増え続ければ国家がつぶれるという発想さえ出ている.
これは仮に“医療費亡国論”と称しておこう」として,論文の中で以下の3点を強調している.
1)医療費亡国論:このまま租税・社会保障負担が増大すれば,日本社会の活力が失われる.
2)医療費効率逓減論:治療中心の医療より予防・健康管理・生活指導などに重点を置いたほうが効率的.
3)医療費需給過剰論:供給は一県一大学政策もあって近い将来医師過剰が憂えられ,病床数も世界一,高額医療機器導入数も世界的に高い.
(山本嗣信)


以下は自動査定へ向けての概要である.

 コンピュータシステムによる機械的処理の拡充
レセプトの相当数が電子化されることに伴い,システム機能を最大限に活用しつつ,効率的審査に努めるとともに,請求支払業務から審査業務に所要の要員を投入することにより,レセプト審査を強化し,相当な審査成績の改善を目指す.
○ レセプト電子化が進展すれば生まれる合理化効果を先取りして,段階的に請求支払業務のアウトソーシングを進めるなど,業務の効率化に努め,レセプト電子化が本格的に開始された平成1 4 年度から19 年度にかけて既に合計約1, 00 0 人の職員定員を削減してきた.
(レセプトの保険者別分類作業,請求支払計算のためのデータ入力については,レセプト電子化を先取りして,すべてアウトソーシングを実施済である.)
○ こうした過程を通じ,請求支払業務は,基本的に大きな人手をかけることなく,オンラインネットワークで処理していく一方,職員の行う業務のウエイトは,審査部門に重点化していくこととなる.
○ 点数計算の確認のような固定点数のチェックや,算定ルールのうち正否の判断が一義的に決まり得る明確なルール・チェックについては,コンピュータプログラムの拡充を図りながら原則完全オンライン化の段階ではすべてシステムで行うこととする.
 これにより,算定ルール上の誤りに係る見落としをほとんどなくす.
(「算定ルール」とは,診療報酬点数表の告示及び関係通知により,具体的かつ明確に定められた保険請求上のルールであり,正否が一義的に決まり得る明確なルールが大部分を占めるが,審査委員の医学的判断を要するルールも一部含まれている.)
(電子レセプトについては,支払基金はレセプトコンピュータ標準仕様( 厚生労働省において公表.メンテナンスは支払基金が実施) に基づく約1 万4 千の算定ルールをチェックするほか,独自にルール・チェック項目を追加し自動査定を実施している.算定ルールに係る査定は,原審査査定のうち,点数ベースで約10 分の1 である)

[ 2008/03/04 15:58 ] 記者の視点 | TB(0) | CM(1)